2008年8月13日~15日  8/13 天上沢の北鎌沢出合で幕営  8/14 槍ヶ岳・肩の小屋泊
 メ ン バ ー  タンタン、DOPPO
行    程  8/13 上高地~横尾~槍沢ロッジ~大曲り水俣分岐~水俣乗越~天上沢の北鎌沢出合
 8/14 北鎌沢出合~北鎌沢のコルの少し上~天狗の腰掛~独標~槍ヶ岳~槍ヶ岳肩の小屋
 8/15 槍ヶ岳肩の小屋~槍沢ロッジ~横尾~上高地
山    名  槍ヶ岳(3180m)
天    候  8/13=晴れ 8/14日=曇りのち小雨と雷雨 8/15日=小雨のち晴れ(2800から上はガスが切れず) 
晴天の下、槍の穂先を見ながら北鎌尾根から登ってみたい。そういう想いになったのが2年前。
相棒のTさんとの日程調整がうまくいかず、昨年の夏もお流れになってしまった。
今年こそやろうと年初から日程を合わせる。予備日を2日とれる5日間はお盆休みしかない。
そこで、8/12日晩からの出発とした。

天気予報では8/13曇り時々晴れ 8/14曇り 8/15曇りのち雨 8/16雨 8/17 曇り時々晴れ,中間日が悪い、難しい天気予報である。
8/13日は北鎌沢出合まで入れるが、8/14の曇りに北鎌尾根を登りきるしか方法は取れない条件になった。
少しでも晴れ間が覗き、穂先を見ながら登れることを期待していたが、山の天気は許してくれなかった。                           
【1日目 8/13】

8/13日 7:30上高知河童橋出発。朝早くから観光客と登山客が賑わっている河童橋からは雲の間に穂高の稜線が見えた。
天気は上々だ。
8:45 徳沢着
ここでも登山客が殆どであるが座るところもないくらいに人で一杯だ。
ブルーのシャツに黒のパンツ姿は殆どが韓国からの登山者だった。
韓国では槍ヶ岳が登山の人気コースなのか?
この集団とは翌日の小屋でも一緒になった。
槍沢ロッジ前で昼食を摂る。ここの水は今ひとつ冷たさに欠ける。
その先の馬場平の水も同じ感じだったが、さらに5分先に冷たくて美味い水場があり、そこで水を補給する。
大曲り水俣乗越分岐
日差しは厳しくなり大曲りから水俣乗越へは汗が噴出す。
水俣乗越ではメットを持った男女の二人が休んでいた。
『北鎌ですか』と聞くと
『そうです』
『じゃあ今日は同じ北鎌沢出合までですね』
二人は先に下っていった。
後から追いかけるように下る。

ザレてはいたが雪渓の横には踏み跡がシッカリ付いている。
緩斜面になると雪渓が大きく出てくる。先行の二人はアイゼンに履き替えている。
我々はアイゼンは持参していなかったので歩きにくい雪渓の横を通り、追い抜いた。

雪渓が無くなると涸れ沢を下る。
左に”間ノ沢”が合流すると水の流れが現れる。

尾根の出っ張った辺りにテントが4張りほど見えてきた。
NETで見ていたイメージとは少し違い、結構幅の広い岩のごろごろした河原だった。
そこが北鎌沢出合であることが直ぐに判った。
出合より50mほど上部、天上沢左岸の段上に丁度よいテン場を見つける。
北鎌沢出合付近の天上沢は伏流しているが、150mほど上流で水を補給できる。
装備は出来るだけ軽くするためにTさんが軽いツエルトと30mザイル。
私がガス器具類と20mザイルを分担して持ってきた。

テン場は何しろ虫が多い。食事をゆっくり摂り、ツエルトを張った後、虫を寄せ付けないように焚き火をして
日暮れを待つ。火が消え7時半ごろに横になった。


【2日目 8/14日】
8/14日 4:30起床。寝坊をしてしまった。もう出発したい時間である。
5:35 出発。北鎌沢のコルまでは標高差約600m。少し登ると右股、左股とに分かれている。
左股からは水の流れがあり、ここで水を2リッター補給し、流れの無い右股を登る。

先行していたA組(4人)とB組(2人、夫婦かも)も先に補給して行った。
途中から傾斜は厳しくなる。B組の女性は苦しいのかゆっくり登っていたので追い抜く。
中間部で休んでいる時、単独者の3人に追い抜かれる。単独者は何れも2回目とか3回目だと言っていたので足取りにも余裕があるように思えた。
稜線に近づくと草付きの急斜面となる。ズルズルと滑りやすく、草を掴んで登る。、ここは結構苦しいところ。
NETの情報では右に登るように記憶していたが先を進んでいった単独者の後を追うように真っ直ぐ登って行く。
7:25
稜線に出ると、テント一張り出来るスペースの前だった。
先行していた筈のA組がまた追い抜いて行った。A組は北鎌沢のコルに上がりここを通過した事になる。
ここが北鎌沢のコルより少し天狗の腰掛寄りであることが確認できた。

天狗の腰掛へは良く踏まれた道が付いていた。
一箇所だけシッカリ木に摑まって岩を登らなければ落ちそうなところがあった。
8:45
天狗の腰掛のピークは結構広く、真ん中にスペースがあり休むにはちょうど良い。
ここでエネルギーの補給をしているとC組(2名)がやってきた。
C組はこのコース初めてだと言っていたがザイルは持参していないと言った。

休んでいるうちに雨がポツポツし出す。
ここから山頂までは岩場が続く。雨具を着てハーネスを付けた。

暫く稜線を進むと、行き止まりか?。
前は切れ落ちている。Tさんが千丈沢側の下りを探すが、こちらも切れ落ちていて無理だと言う。
天上沢側をよく見るとザレ場を下りトラバース出来そうな感じだ。



小雨は振ったり止んだりで此処までは大して影響はなく進めたが、ガスで先が見えず
ルートが探しにくく時間が掛かる。

ぼんやりとガスの中に大きなピークが立ちはだかる。
独標に違い無さそうだ。
ここはNETで学習している通り千丈沢側をトラバースする。
と言うより、他に通過できそうなところは見当たらない。

思いっきり切れ落ちている狭いトラバース。
見た目には怖そうだが、通過には苦労するところは無かった。


前を行くC組の二人


進めなくなった所で小さいチムニーがありフィックスロープがぶら下がっている。
C組の一人はフィックスロープを使わず左を登っていった。
もう一人は途中で躊躇していたが何とか安全な所に着いたようだ。
Tさんはフィックスロープのところを登っていったが私には無理そうだった。
左の岩を登るも途中でTさんが登ったチムニー側に足を掛けようとするがザックに振られると思うと嫌だった。
Tさんにロープを要求し右側へ渡る。

先行のC組は真上に上っていった
『行けそうですか~』と声を掛けると大きく手で○を作ってくれた。
ザレ場の登りはズルズル滑る。出来るだけ岩の横を這いつくばって登る。


登りきった所が独標だったが足を止めずに進む。
この辺りからはガスで次のピークも全く見えず。ルートも取り辛くなり時間が掛かる。
先行しているC組の姿はガスの中に消えていった。
雨も振ったり止んだりを繰り返す。残念だがカメラはザックに仕舞い込んだので独標から先の写真はない。
コルに下るとC組に追いつく。千丈沢側にトラバースできそうだが無理そうだ。
C組は真っ直ぐ岩場を登っていった。


登れそうにもあるが、出来れば安全なところを登りたい。
Tさんが無理そうだと言っていたその先にルートを見つけた。
岩を抱えるように巻くと、そこにフィックスロープがぶら下がっていが足元は切れ落ちている。

ここでは安全のためにザイルを使う。
Tさんが先に30m登り、私が続いた。登りきったところでまたC組と一緒になった。

P11~14はどこがどうだか前後のピークが見えず、濃いガスで全く判らなかった。
ことごとくピークを辿ったが小ピークを含めるともっと沢山有ったように思う。
15時には着けると思っていた槍の山頂はどんどん遠のいてゆく。

前を行くC組は再びガスの中へ消えていった。

Tさんはザックカバーがザックの一番底になっていると言うので出す暇も無くカバーをしていない。
水を含んだザイルとザックが次第に足を遅くしているようだ。

2つ.3つ幕営出来そうなところが有ったので北鎌平と思えるが、通過したのは15時を過ぎていたかも知れない。
雨は止まない。

雷鳴が聞こえてくる。
小さいピークへ差し掛かる頃は雨も本降りになり
『ドーン、バキーン、バリバリ』と雷鳴は木魂し次第に近づく。

『やばいぞ、避難しよう』
岩陰に避難しツエルトを被り一時ビバーク。
早く治まってほしい、時間がない。このままだとどうなるのか?
朝を待つことになるのか?
寒さで次第に身体が震えてくる。
風が強いのでツエルトを持ったまま暫く眠っていたように思う。

40分ほど過ぎた。そして雷鳴が治まりホッとする。雨も小降りになりガスが薄くなった。
自分たちがどの辺りに居るのかは判らなかったが、大槍に近づいていることは間違いないと思った。

『薄い影が見える』とTさんが言った。天を突き刺す様に薄く黒い山頂と西鎌尾根が浮かんだ。

16:20
再び登り始める。どのようにルートを取れば良いのかは判らなかったが兎に角上に向かった。
西側は切れ落ちているので尾根伝いに登る。
『チムニーだぞ』
NETで見ていた通りの所だった。Tさんが挑戦するも無理そうなことを口にする。
雨に濡れた岩と重くなったザックで危険を感じたのだろう。
Tさんがザックを降ろして空身で登り、次にザイルの中間でザックを括り上げた。再びザックを担いでTさんが20mほど登ったところで確保。

ビレイしてもらって私も登る。
最初は右側から登り体を引き上げて少し左に振れるようにすると登れた。

やはりここが核心部だったかと思う。
その上もヤバそうな所もあったが何とか。

ひょっこり出たのが祠の後ろ。
『着いたぞ~』後から来るTさんに声を掛ける。

17:30 誰も居ない山頂に立つ。小雨が降っていて風も有った。
こんな条件の中、登山者は居る筈も無いことは判っていたが、チョッと拍手も欲しかった・・・かな。

『やったぞ~』と両手を挙げて叫んだ・・・・・が声には成っていなかった。

還暦記念の北鎌尾根はガスと雷雨の中だったが感慨もひとしお。硬い握手でお互いを祝福した。
そうだ、そんなに感慨に浸る暇は無いのだ、下らねば!
冷た~くなった鉄梯子を下る。
18:10
肩ノ小屋は20mほど先にやっと見えてきた。小屋の中はごった返していたが我々の異様な姿を横目で見られた。
19:30
広い食堂では朝食の準備をしていた。その片隅で2人で祝杯をあげる。
お盆休みの小屋は結構詰まっていたが9人部屋に4名。一番遅く到着してもラッキーな事があるものだ。


3日目 8/15日
8/15 5:30
朝から小雨の中を下る。下るに従がい晴れ間も覗くようになるが上はガスったまんまだ。
ヘリが舞い天狗原あたりの遭難者を捜索していた。

槍沢でビール、徳沢でビール。

13:10 河童橋着

夢に見た青空の大槍を見ながらの北鎌尾根。それは叶わなかったが一度はやってみたかった念願の北鎌尾根。
還暦の記念には大いに達成感のある北鎌尾根だった。強烈な思い出は忘れることは無いだろう。
心強いパートナーのタンタンさん、ありがとう(^0^)

 (参考タイム)
 8/13 上高地河童橋7:30~明神~8:45徳沢9:00~9:45横尾10:10~11:15槍沢ロッジ11:45~大曲り分岐12:45~
       ~14:00水俣乗越14:10~北鎌沢出合15:40

 
8/14 北鎌沢出合5:35~7:25北鎌沢のコルの少し上7:45~8:40天狗の腰掛9:00~独標基部10:17~独標10:50ごろ
     
この辺りは雨でメモを取れなかった~15:40大槍手前の小ピーク下で一時ビバーク16:20~17:30槍ヶ岳山頂~肩の小屋18:10
 
8/15 肩の小屋5:30~10:00横尾10:30~11:15徳沢11:45~明神~上高地河童橋13:10
タンタンさんの記録